8 rue Muller/Reina Kitada

アルバム

8 rue Muller

Reina Kitada

2017/11/8リリース

15曲収録

1,885

再生時間:65分38秒 / コーデック:AAC(320Kbps)

ファイルサイズ:159.06 MB

■Reina 青春の光と影 in Paris
永瀧達治
幼い頃からヴァイオリンを弾いていた東京の「お嬢様」(だったと思う)が、国立音大付属高校卒業後、18歳で単身、パリに飛び出した。ジャズ・ヴァイオリンの大家、ディディエ・ロックウッド氏に師事し、彼の運営する音楽院で学んだ後に、パリ近郊の国立コンセルヴァトワールへ。
その娘、Reinaが、やがて夜遊びを覚え…パリのミュージシャンたちの仲間入り。日夜、音楽に浸り、ライブとパーティ三昧、恋も酒も覚えた…。
ヘミングウェイの言葉のように、毎日が祝祭日のようなパリの青春を送った人間には一生、パリが付きまとう。一生、青春が付きまとう。
そんな予言に翻弄されるように、日常の細かなことに固執する日本では、もう、まっとうな人生なんか送れない(に違いない)。
時代が違うと言ったら大違いなのだが、かくいう私も50年ほど前にパリでヒッピー的放蕩の日々を送ってきた(だから、Reinaは私に、このアルバムのコラムを依頼したと思うのだが)。同類相哀れみながら、私はReinaのアルバムを聴いた。
タイトルは 8 Rue Muller 歓楽街ピガールから遠くないモンマルトルの路地。Reinaが住んだ通りの名前。彼女の笑いと涙が今も残っているに違いない。行き交うのはアラブ人や黒人、中国人たち…故郷を離れた無国籍の異邦人の街。だが、家賃の安さからか、90年代ぐらいからは若いミュージシャンやアーチストたちが住む街に変わってきた。ストリップ小屋は店を閉めてライブハウスに変わり、街路に立つ娼婦やポン引きたちは姿を消した。
パリの魅力をReinaに問うと、すかさず「リベルテ」と返事が来た。そう、「自由」はパリの魅力であり、魔力であり、やがて麻薬となる。どんな格好をしていようが、どんな肌の色をしていようが、どんな言葉を喋ろうが、それをとやかく言う人はいない。だからと言って、無関心なのではない。自分の主張を他人に押し付けてくるお節介もある。黙っていては生きていけないから、自分も自分を主張するようになる。誰もが自分を主張すると、そこに自由が生まれる、そんな街なのだ。
日本では自由奔放というお得意の四文字熟語があるくらい、自由は奔放だと解釈される。確かに、奔放かもしれぬが、俺の(あたしの)人生、放っておいてくれ!
このアルバムはReinaによるパリの青春の集大成だ。ジャズだけでなく、シャンソンやフレンチポップスにも影響を受けた自由で奔放なる青春の日々。日本でいうカワイイはないが、キュートで生意気なチチ(Titi)パリジェンヌ(おてんばパリ娘)の魅力にあふれている。
これから大人のパリジェンヌに成長するReinaが楽しみだ。 (2017.9.10 パリにて)

収録曲

Reina Kitadaの他のアルバム アルバム一覧